電子マネー社会の落とし穴:現金を持たないリスクとは

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便利さの影に潜む「もしも」の不安

「スマホさえあれば財布はいらない」──そんな時代が本当にやってきました。
コンビニも、駅も、スーパーも、スマホ一つでピッ。もう小銭を探す手間も、財布の厚みを気にすることもありません。

経済産業省の発表によると、2024年の日本のキャッシュレス決済比率は**42.8%**に到達。政府の2025年目標(40%)を一年前倒しで達成しました。PayPayや楽天ペイといったQRコード決済の普及、非接触型のクレジット決済の浸透が大きく寄与しています。

しかし――。
地震、台風、停電、通信障害。
自然災害が多い日本で「現金を持たない生活」は本当に安全なのでしょうか?

2025年の今、便利さの裏に潜む「落とし穴」が、静かに私たちの暮らしを脅かしています。


加速するキャッシュレス化の現状

日本政府は2019年、「キャッシュレス・ビジョン」で**将来的に決済比率80%**を目指す方針を掲げました。コロナ禍以降、非接触需要が一気に拡大し、QR決済や電子マネーの利用は過去最高を記録。

2023年の決済総額は126兆円を超え、そのうちクレジットカードが8割以上を占めています。
一方で、総務省の調査によると、依然として「現金を主に使う」と答える人は50%以上。特に高齢者や地方在住者には「セキュリティが不安」「使い方が難しい」という声が根強くあります。

SNS上では、「キャッシュレスは便利だけど、停電したら何も買えない」という投稿が何度も拡散されました。

「電子マネーが残高10万円あっても、停電したらパン一つ買えない」
(Xユーザー @chibi20003311)

キャッシュレス化は、便利であると同時にリスクを共有する社会構造を生み出しているのです。


現金を持たないことのリスクとは?

キャッシュレス決済は「快適」な反面、災害時やトラブル発生時に脆弱です。
以下のようなリスクを具体的に見てみましょう。


① システム障害・停電による決済不能

電子マネーは電気と通信で動く仕組み。
つまり、停電やネット障害が起きれば、**「お金があっても使えない」**状態になります。

2018年の北海道胆振東部地震では、全道停電により電子マネーやATMが停止。

「現金がなくて、パン一つ買えなかった」
という住民の声がSNSで話題になりました。

経済産業省の報告でも、首都直下地震発生時には「ショッピング難民」が発生する可能性が指摘されています。


② サイバー攻撃・不正利用

便利なキャッシュレスの裏には、情報漏洩のリスクがあります。
2019年の「7pay事件」では、ハッキングによって約50万ドル相当の不正利用が発生し、サービスがわずか数日で終了しました。

フィッシングメールや偽アプリによる被害も年々増加。
被害金が戻らないケースも多く、個人が背負うリスクは軽視できません。

「便利だけど、IDを盗まれたら一発アウト」
(Xユーザー @SKIDROW04241717)


③ 金融排除と格差の拡大

キャッシュレス化の波に取り残される人もいます。
スマホを持たない高齢者、電子マネー非対応の地方店舗、そして生活保護受給者。

「スーパーが電子マネーだけになって、買い物できなくなった」
という投稿が共感を集めました。

北欧スウェーデンでは、完全キャッシュレス化が進みすぎた結果、高齢者の孤立が社会問題化。
日本も他人事ではありません。


④ “使いすぎ”の心理リスク

キャッシュレスでは「お金を使っている感覚」が薄れ、支出が増える傾向にあります。
実際、日本生命の研究では「現金払いよりもキャッシュレス利用者の方が支出が1.2倍多い」との結果も。

「カードだとつい買いすぎるから、あえて現金派」
(Xユーザー @tyotyoporisu10)

スマホ決済が“見えないお金”を加速させ、浪費癖を助長する心理効果が懸念されています。


⑤ 事業者側の負担と監視リスク

キャッシュレス導入に伴う**手数料(3〜5%)**は、小規模店舗にとって深刻な負担。

「新規客は増えたけど、利益が3分の1減った」
という飲食店経営者の声もあります。

さらに、電子決済ではすべての取引履歴が記録され、プライバシーの喪失監視社会化への懸念も高まっています。


実際に起きた「キャッシュレス地獄」

北海道胆振東部地震(2018)

全道停電で電子マネーが使用不可に。現金を持たない若年層が物資を買えず混乱。
スウェーデン中央銀行も「キャッシュレスは災害に脆弱」と警鐘を鳴らしました。

首都圏想定地震(2025年想定)

通信障害によりQRコード決済停止。政府試算では「現金保有世帯の生存率が高い」と分析されています。

中小店舗の倒産事例

キャッシュレス導入で客は増えたが、手数料と入金遅延で資金繰りが悪化。

「電子決済が利益を奪った」という声が広がっています。


備え方 ― 現金+電子の“ハイブリッド生活”を

完全キャッシュレスではなく、「両輪で使う」ことが、これからの時代の賢い選択です。

1️⃣ 現金の備蓄を忘れずに
家族構成に応じて、1週間分の生活費を現金で確保。
(例:単身者2万円、4人家族10万円)
耐火・防水のポーチに入れ、災害時にも持ち出せるようにしておきましょう。

2️⃣ 決済手段の分散
クレジット、QR、交通系IC、プリペイドなど複数手段を保持。
一社依存を避け、トラブル時の代替策を確保します。

3️⃣ セキュリティ対策を徹底
二段階認証を設定し、アプリの自動更新や不審メールを警戒。
定期的に明細をチェックしておきましょう。

4️⃣ 家族で「お金の見える化」教育を
子どもにも現金管理を教えることで、浪費癖や依存を防ぎます。
学校や家庭での金銭教育も重要です。


結論 ― 便利さと安全の両立を

キャッシュレス社会は、確かに私たちの生活を豊かにしました。
しかしその便利さの裏には、停電・障害・情報漏洩・格差といった“見えないリスク”が潜んでいます。

現金は、ただの古いツールではありません。
**「最後に頼れる命綱」**です。

便利さを取り入れながら、もしもの時に備える。
それこそが、真の意味で“スマートな生き方”なのかもしれません。

あなたは今日、財布の中にいくらの現金を入れていますか?

最終更新日: 2025-10-30
平川 静修
平川 静修|ライター
地図 高齢ドライバー支援 生活インフラ記事全般

住所・地図の実務、PDF/印刷、家計の効率化、広告計測(GA4/GTM/AdSense/Google広告)を“現場で動かし、再現手順に落とす”ことを得意とする編集者。SaaSと自動化を軸に、暮らし×テクノロジーの課題を手順化・テンプレ化して発信しています。

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