高齢者講習はなぜこんなに大変なのか——予約の壁、講習の緊張、検査のプレッシャー、家族の葛藤

高齢ドライバーの免許更新に関わる「高齢者講習」「認知機能検査」。
現場からは、「予約が数か月先まで埋まっている」「実技で緊張して普段通りに運転できない」「検査が思った以上に難しい」「返納後の生活が不安」といった声が相次いでいます。この記事では、全国各地で実際に語られた体験や証言をもとに、予約の遅延・システム問題/講習中のヒヤリ体験/検査の戸惑い/家族の説得・ケア/返納後のリアルを、そのままの温度感でまとめました。

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目次

予約の困難(予約遅延・システム問題)

予約が数か月待ち
香川県では高齢者講習の予約待ちが平均116日以上にも及び、全国最長でした。ある教習所では、問い合わせた高齢ドライバーに対し「どこもいっぱいいっぱい(満席)」と伝えられた例もあります。

期限ぎりぎりまで予約不可
「正月ごろに頼んで…4月になってしまって、これではだめだ」という声もあり、年明けに申し込んだのに4月まで連絡がなく更新期限に間に合わないケースも報告されています。実際に「予約が取れず免許が失効してしまう人も出ている」と香川県公安委員会も認めています。

鳥取県でも予約満杯
鳥取県内のある自動車学校では「4か月先まで予約が一杯」という状況になっており、なぜここまで取りづらいのかと話題になりました。地域によっては高齢者講習の予約待ちが半年に及ぶケースもあります(相模原市では教習所が3箇所しかなく半年待ちになる例も)。

通知後すぐ電話しても遅い
長崎県のある75歳男性は6月に通知ハガキが届き翌日に予約の電話をしましたが、その時点で8月末まで予約が埋まっていました。「ハガキを受け取ったらすぐ電話してください」と注意書きがあるものの、即連絡しても2~3か月待ちはザラです。

予約電話の失敗体験
近所の教習所に電話した高齢女性は「4カ月先になります」と言われ驚愕。待てないと感じて別の教習所にかけても「空きがありません」「現在予約できません」と次々断られました。再度最初の教習所に電話した時には、初めに提示された4カ月先の枠すら埋まっており、「来月また電話を」と告げられてしまったそうです。結局、予約が取れるまでその方は不安な日々を過ごしています。

電話・システムのトラブル
神奈川県警の高齢者講習予約専用ダイヤルでは障害発生により電話が繋がらない事態も起きました。予約方法が電話に限られる地域では、回線パンクや機械トラブルが講習予約をさらに困難にしています。

人手不足と繁忙期
教習所側も「繁忙期と重なると検査や講習の待ち日数が長くなる」と説明しています。高齢者講習の担当指導員や実施枠に限りがあるため、気付いた時には更新に間に合わないという事態を避けるには、通知が来たら即行動することが強調されています。

次のページ  実技中のミス・緊張 認知機能検査への反応


講習での運転体験(実技中のミス・緊張)

実習中のヒヤリ体験
高齢者向けの運転講習会では、縁石に乗り上げてしまう、気付かず逆走(反対車線を走行)してしまうといったミスが実際に起きています。ある講習では高齢ドライバーが歩道に乗り上げたり、停止線を大きく超えて停止してしまうケースも見られ、指導員によれば「高齢による運転操作ミスは誰にでも起こりうる」状況です。

緊張で普段通り運転できない
講習に参加したある高齢ドライバーは「緊張していつもの運転と違ってしまった」と実車指導後にこぼしています。教習コースに設けられた10cmの段差(ペダル踏み間違い対策の障害物)に乗り上げ、指示通り急ブレーキを踏む練習では、想像以上に緊張感が高まり手順を忘れそうになったという声もあります。指導員も「緊張でうまく運転できなくなることも分かってください。それを踏まえて普段の運転を」と優しくフォローしていました。

教習所で見た高齢者の実態
75歳以上の講習では個別の実車指導がありますが、指導員の助言によると「試験ではない」と分かっていても皆どこか固くなっているそうです。あるブログ筆者(74歳男性)は「3人1組でお互いの運転を見る以前の方式より、マンツーマン指導のほうが緊張する」と感じたと記しています(現在は一人ずつ実車指導する形式)。同席の他受講者からは「ブレーキとアクセルの踏み間違いが怖かった」「後続車が気になり余裕がなかった」など、実技中のプレッシャーを語る声もありました。

指導員の助言と評価
実技講習の最後に指導員から個別フィードバックがあります。「運転は控えた方がいいでしょう」と注意を受けた高齢者もおり、その方は「今後は運転頻度を減らそう」と述懐していました。講習は合否のない場ですが、自身の運転を客観的に見つめ直す機会となり、「ヒヤリとした場面を指摘されドキッとした」「他人から運転を評価されるのは初めてで緊張した」という感想も聞かれます。


認知機能検査への反応(不満・感想)

「検査が難しい…」
75歳以上対象の認知機能検査では、受検者たちから「今のテストは難しかった」との声が一斉に上がりました。ある講習で最高87歳の参加者まで含め全員が「思うように思い出せなかった」と苦笑し、終了後に「こんなにできないとはショックだ」と漏らす人もいたそうです。16枚のイラスト記憶テストでは「時間いっぱい粘ったが全部は無理だった」という声が典型的で、多くの高齢者が自らの記憶力低下を痛感しています。

一日がかりの大仕事
元都知事の舛添要一氏は自身の免許更新で「75歳を超えたので認知機能検査と高齢者講習が必要で、一日がかりの作業だった」と報告しました。検査・講習当日は朝から夕方まで拘束されるケースもあり、「高齢の身には丸一日の日程は負担」との声も聞かれます(休憩時間に昼食を取ると眠くなるので抜いた、というエピソードも)。遠方の試験場まで行かなければならない地域では、移動時間も含めて高齢者にとって相当ハードなイベントになっています。

現実と向き合う怖さ
長年運転してきた人にとって、自分の認知能力をテストされることは「現実と向き合う怖い瞬間」だと言います。ブログに感想を寄せた高齢ドライバーは「事前に予習してしまうと本当の機能が分からなくなるので、あえて勉強せず臨んだ」と記しつつも、結果を待つ間は内心穏やかでいられなかったと綴っています。
認知機能検査は「社会から能力をチェックされる」感覚があり、「落ちたらどうしようという不安で前夜眠れなかった」という高齢者も少なくありません(受検者の体験談より)。

検査会場での戸惑い
認知機能検査の会場では、係員が幼稚園の先生のように繰り返し丁寧に説明してくれます。それでも同じ注意を何度も質問し直す受検者がおり、周囲の高齢者同士で「大丈夫かな」と心配になる場面もありました。制限時間内に書き終われずパニックになりかけた人、時計の針を書く問題で逆方向に描いてしまい「しまった!」と声が漏れた人など、検査中は緊張と焦りからミスも起こりがちです。終了後、「もう二度と受けたくない」「疲れてクタクタだ」と肩を落とす受検者も見られました(現場での観察談)。

合否ラインへの不安
認知機能検査そのものには合否はありませんが、点数が低いと第1分類(認知症のおそれあり)となり医師の診断が必要です。講習受講者の中には「もし次は点数が足りなかったらどうしよう」と不安を口にする人もいました。ある講習では36点ギリギリ合格の人もいれば高得点の人もおり、結果にばらつきがありました。指導員から「ギリギリだった方はご自身でも運転継続を慎重に判断してください」と念押しされる場面もあり、当事者たちは真剣な表情で頷いていたそうです。

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家族の声・説得エピソード(高齢ドライバーの家族の本音)

講習不合格を他人のせいに…
「安全講習に何度も落ちてるのに試験官が悪い、自分は悪くないと言い張り、免許返納に抵抗し続ける父をどうにかしたい」とXで吐露する人がいます。家族の説得にも耳を貸さず「俺の運転に問題はない」と聞き入れない高齢ドライバーに、子ども世代は頭を抱えています。「人を轢き殺したりする前に止めないと…これだから高齢ドライバーは」と苛立ちや不安を漏らす声もあります。

82歳頑固おじの返納作戦
ある40代女性は、免許返納を渋る82歳の叔父に悩み、親戚一同で説得大作戦を決行。叔父は物忘れや迷子が増え、車に傷をつけても平然としており家族の制止を聞き入れませんでした。そこで叔父が頭が上がらない実姉(叔父より2歳上)にも来てもらい、「みんなあなたのことを心配して言ってるの!」と叱ってもらったところ態度が一変。「もし他人を轢いて死なせたりしたら、皆ここに住めなくなるわよ!」という姉の一言にショックを受け、叔父は「わかった、考えるよ…」と折れました。2週間後、叔父は自主返納しました。家族ぐるみでの説得が功を奏した成功例です。

違反をきっかけに発覚した認知症
埼玉県のTさん(48)は81歳の父の免許返納に向き合いました。生真面目で無事故無違反だった父が人生初の信号無視違反で警察に捕まり、受けた認知機能検査で「認知症のおそれ(第1分類)」と判定されてしまったのです公安委員会から「3か月以内に自主返納するか医師の診断書を提出せよ」と迫られ、家族は大きなショックを受けました。無事故記録が自慢だった父だけに娘は葛藤しましたが、「取り上げられるのではなく、自分から返したよと胸を張ってほしい」と願い、辛い説得を続けました。父娘とも複雑な思いを抱えましたが、更新期限間近の10月末、父はついに警察署で免許を自主返納してくれました。

返納後の喪失感とケア
上記のTさんの父(81歳)は大切な車と仕事を同時に失い、返納直後はすっかり憔悴してしまいました。「返納したら終わりではなく、その後の見守り支えが大切。それが思いのほか大変」と娘のTさんは語ります。返納1か月後、父は「長年の得意先に迷惑をかけるのが辛い。これからの人生が不安だ」と漏らしました。娘と相談の上で決めた返納とはいえ、本人は喪失感で頭がいっぱいなのです。しかし「まずは店番でもするかな?」と新たな役割を模索する前向きな発言も聞かれ、家族はほっとしたそうです。このケースから、家族は免許を返した後の心のケアが重要であることがわかります。

「運転したい」母への胸の痛み
70代の実母脳卒中で認知症を発症し、入院中にもかかわらず「運転したい」「免許を更新しなくちゃ」と言い続けている——そんな切ない状況も報告されています。実はお母様の愛車は既に処分免許も失効していますが、時間感覚が曖昧な母に「まだ更新の年じゃないよ」と伝えているといいます。家族としては嘘をついているようで辛いものの、「運転が母の希望だから…」と涙ぐむ娘さんの声もありました(認知症の母親を持つ家族の体験談)。

夫の遺言に驚いた義母
北海道のある女性(50代)は義母(79)の免許返納にまつわるユニークな体験を明かしています。義母は55歳で免許を取得。しかし取得後1~2年のうちに3回も車を全損させる事故を起こし、幸い大けがはなかったものの周囲は肝を冷やしました。次第に義母自身も車の話題を出さなくなり運転もしなくなりましたが、免許証だけは手元に保持していたのです。そんな義母が人知れず自主返納していたことが判明したのは、14年前に義父が亡くなった時でした。生前、安全運転に定評のあった義父が遺言で「お前は一生運転するな」と書き残していたのです(思わず家族も苦笑)。愛する夫にそこまで心配されていたと知った義母は観念し、その遺言通り静かに免許を返納したのでした。許を返してくれてホッとした反面、移動のサポートをどうするか課題になった」という声もあり、社会全体で高齢者の移動手段を整える必要性が指摘されています。

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