スタッドレスをケチった冬に起きたこと

クリスマスの夜、俺は雪のガードレールに命を預けた。
理由はひとつ──スタッドレスをケチったからだ。

このブログはフィクションじゃない。
命を落としかけ、家族の笑顔を凍らせた、俺自身の記録だ。
もしあなたがまだ「今年は雪少ないし大丈夫」と思っているなら、
この話を最後まで読んでほしい。
命を守るために。


目次

第1章:油断の秋「雪、少ないらしいぞ」

10月下旬、東京のオフィス街。
俺──佐藤健太、35歳。地方出身のサラリーマン。
車が好きだが、金はない。年収400万。愛車は10年落ちのスズキ・ジムニー。

車検の見積もりを見て、頭を抱えた。

「スタッドレス?高ぇなぁ……」

コンビニ前で缶コーヒー片手にぼやくと、同僚の田中が言う。

「安いのでいいじゃん。ナンカンAW-1とか3万で買えるぜ」

SNS(X)を開けば、同じような投稿が溢れていた。
「安物でも止まる」「雪少ない年は余裕」──。
俺も、信じた。信じたかった。財布が寒かったから。

結局、中古ショップで2万円のスタッドレスを購入。
残溝7mm、見た目ピカピカ。
ただし製造は3年前。ゴムはもう硬くなり始めていた。
でも「まぁ1シーズンくらい持つだろ」と自分に言い聞かせた。

地元・山形に帰省する計画を立てた。
母さん(62)と妹・あかり(28)がLINEで「楽しみにしてる!」と送ってきた。
俺は笑顔で「任せとけ」と返信した──ノーマルタイヤのままで。


第2章:大雪の罠「ちょっと滑っただけ」

12月24日。
予報外の寒波が東北道を覆った。
首都高ではスタック続出。ニュースで「通行止め」と流れていた。

「でも行けるだろ、まだイケる」
俺は根拠のない自信でアクセルを踏み込む。時速80km。

福島に差しかかるあたりで、路面が白く光った。
軽くブレーキを踏む──
ズルッ。車体が蛇のように尾を振った。
「うおっ!」反射的にハンドルを切り、なんとか復帰。心臓が喉に張り付く。

「やべ、交換しとけば……いや、サービスエリアでやろう」

慌ててSAで停車。
トランクから中古スタッドレスを引っ張り出し、ジャッキアップ。
凍える指で30分。
ゴムは硬く、ネジも回らない。
「まぁ、溝あるし……大丈夫だろ」
そう言い聞かせ、Xに投稿。

「安物スタッドレスにチェンジ! 雪道余裕w」

その10分後、山形道に入る。
吹雪。視界は真っ白。坂道でアクセルを踏むが、車が前に進まない。
「おいおい、滑ってる!?」

ブレーキを踏むと、止まらない。
速度20km/hでガードレールに「ガツン!」
衝撃で頭が揺れ、足元が取られ、転倒。足首をグキッとひねる。

母さんに電話した。
「あと1時間で着くよ」
でも本当は、声が震えていた。


第3章:家族の笑顔と影

夜9時。
実家に着くと、母さんのチキンの匂いが家中に広がっていた。
あかりが笑顔で出迎える。

「兄貴、遅かったね! 雪すげーじゃん!」

俺は足を引きずりながら言った。

「スタッドレスのおかげだよ。安物だけどな」

笑ってごまかした。
母さんは気づかなかった。俺の手が震えていたことに。

翌25日。
母さんが言った。

「明日は私の車で買い物行こうか?」

俺は見栄で答えた。

「いや、ジムニーでドライブしよう! 山道のイルミネーション見に行こうぜ」

午後2時、出発。
車内には母さん、あかり、妹の彼氏。
「綺麗だね」と言った次の瞬間──

対向車がスリップ。
俺がブレーキを踏む。
キィィィーーッ。

……止まらない。
ゴムが氷の上をスケートのように滑る。
ハンドルが効かない。
そして、世界が横に回転した。

バキィン!
ジムニーがガードレールに突っ込む。
フロント大破。サイドガラス粉々。
母さんの悲鳴。
あかりの腕が不自然な角度に曲がっていた。
妹の彼氏は額から血。俺は意識が遠のいた。


第4章:後悔の病室「命で払った銭失い」

白い天井。点滴。焦げたゴムの匂い。
医者の声が遠くに聞こえる。

「スタッドレス、硬化してましたね。新品なら止まってたかもしれません」

母さんが泣いていた。

「健太、ごめんね……もっと言っておけば」
あかりも泣いていた。
「兄貴のケチり、家族みんな凍らせたよ」

保険屋から電話。
「過失2割加算です。劣化タイヤが原因と見なされました」
俺は天井を見上げたまま、涙が頬を伝った。

ニュースアプリを開く。
「20年物のスタッドレスで死亡事故」「ノーマルで首都高多重衝突」
どの記事も、他人事じゃなかった。

俺は、命をお金で計っていた。


第5章:再生の一年「学びの代償」

退院後、真っ先に新品のスタッドレスを買った。
ブリヂストン・ブリザック、8万円。
4年以内交換、溝50%以下即アウト。
チェーンも常備。速度は30km以下。
もう二度と、冬をなめない。

翌年の冬、雪の峠を家族で越えたとき、母さんが言った。

「健太、静かだね」
「うん。タイヤがちゃんと掴んでる音、聞こえるだろ?」

あの音が、俺には命の鼓動に聞こえた。


終章:季節の警鐘「ケチった分、家族が泣く」

あの冬から一年。
俺のジムニーは今日も走っている。
新品タイヤで、しっかりと雪を噛みしめながら。

俺が伝えたい教訓は、たった5つだ。

教訓なぜ?(実例)実践アドバイス
1. ノーマルで雪道NG制動距離1.7倍、首都高多重事故雪予報出たら即交換。法令違反で反則金5,000円
2. 安物は1年限界氷上で2倍滑る、SNS失敗談多数命は3万円より高い。新品を選べ
3. 4年超は即交換ゴム硬化でグリップ消失製造年を確認。夏履き流用は厳禁
4. 全輪装着必須駆動輪のみ→横転リスク2倍国交省が警告。必ず4本セットで
5. 速度30km以下事故の89%は低速域で発生油断こそ最大の敵。チェーン常備を

安物買いの銭失いは、命で払うことになる。
家族の笑顔を凍らせたあの冬を、俺は一生忘れない。
あなたは、同じ後悔をしないでほしい。
スタッドレス、今日交換しよう。


🔗 参考リンク:

最終更新日: 2025-10-16
平川 静修
平川 静修|ライター
地図 高齢ドライバー支援 生活インフラ記事全般

住所・地図の実務、PDF/印刷、家計の効率化、広告計測(GA4/GTM/AdSense/Google広告)を“現場で動かし、再現手順に落とす”ことを得意とする編集者。SaaSと自動化を軸に、暮らし×テクノロジーの課題を手順化・テンプレ化して発信しています。

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