保険は継続か乗り換えか——乗り換え派と継続派、分かれた理由

更新のメールは、どの春も同じ時間に届く。
真夜中、台所にだけ灯りを残して、ミナは封筒を指で弾いた。
「継続でいいんじゃない?」と夫。
その頃、幼なじみの直哉は、別の画面で“乗り換え”のボタンの上に指を浮かせていた。
自動車保険“継続 or 乗り換え”で、二人の時間は少しだけ違う速度で進みはじめる。

シンクの水音が止むと、家は急に静かになった。
ミナは冷蔵庫のマグネットに挟んでいた保険証券を外して、テーブルに置く。契約更新の締切まで、あと三日。
「去年と同じでいいなら、クリック一回」——スマホの表示はやけに軽い。けれど、紙に書いてある言葉は重かった。対人対物、示談代行、ロードサービス。全部“いつか”のための約束だ。

「ねえ、継続にしよっか。変えて失敗したら怖いし」
夫の声は、眠気と現実の間で行き来している。ミナはうなずきかけて、やめた。
封筒からレシートみたいなメモが出てくる。去年、事故も違反もなかった。等級は一段上がり、保険料は少し下がった。“良い年”だった。じゃあ今年も、だろうか。

豆知識①:自動車保険は多くが1年契約で、無事故なら更新時に等級が上がり、保険料に影響する(出典:金融庁)

ミナは証券のすみに鉛筆で書く。
〈今年の暮らし:通勤は週2回/子の送迎あり/夏に長距離〉
紙の上の文字は、アプリの“同条件”よりも正直だ。
「来年の私たちへ」——ミナは小さく書き足した。
そのとき、スマホが震えた。幼なじみのグループに、“買い替えた?”の通知。車の話題は続き、そのまま保険の話になった。
「俺、乗り換えるつもり」と直哉。
ミナの胸に、小さな棘が刺さる。継続と乗り換え、どこで分かれる?

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