観察記プロローグ:夜の始まり
こんにちは、またはこんばんは。
私の名前はあかり。ごく普通のOLで、恋にちょっと不器用なタイプです。最近出会った彼――拓也さん。出会った瞬間から、どこか特別な人だと感じました。でも、ひとつだけ気になることがあるんです。
それは、“LINEの返信が遅い”ということ。
既読がつくのはいつも夜遅くて、しかも時間がバラバラ。0時の日もあれば、2時の日もある。最初は「忙しいのかな」と思っていたけれど、夜になるとスマホの光を見つめながら考えてしまうんです。
――これって、脈あり? それとも脈なし?
そんな小さな疑問をきっかけに、私は“夜の観察記”を書くことにしました。恋の迷路を少しでも言葉にして整理したかったから。心理学の本や恋愛コラム、SNSの体験談を参考にしながら、妄想半分・考察半分の記録を残していこうと思います。
フィクションかもしれない。でも、きっとどこかに「わかる…!」って共感してくれる人がいるはず。
Day 1:深夜2時の既読 ― 忙しさの影?

朝、私は軽い気持ちでメッセージを送った。
「週末、何してる?」
既読がついたのは、なんと深夜2時。返信はなし。
ベッドの中でその通知を見つめながら、思わずため息をついた。
でも、既読がつくだけまだマシなのかもしれない。ネットで調べると、「返信が遅い男性は仕事人間であることが多い」と書かれていた。なるほど、拓也さんはITエンジニア。夜遅くまでコードを書いているのかもしれない。
もし脈ありなら、きっと翌朝には返事がくるはず――そう信じて眠りについたけれど、頭の片隅では「もしかして他の女性と一緒?」という悪い想像もちらつく。
恋って、本当に“自分の心との戦い”だ。
心理学によると、回避型の男性は感情を整理するのに時間がかかり、返信をためらうことが多いらしい。罪悪感や未練があると、つい既読スルーしてしまうのだとか。
今夜は、スマホを握りしめたまま眠ろう。
ドキドキと、ほんの少しの寂しさを抱えながら。
Day 2:夕方即既読、返信は夜9時 ― 駆け引きの予感
昨日のメッセージに、夕方6時ぴったりで既読がついた。
でも、返信が来たのは夜9時過ぎ。
「週末は仕事かも」――たった一行。
一瞬、「え、これだけ?」と思ったけど、既読が早くて返信が遅いのには理由があるらしい。心理学の本によれば、“好意はあるけれど慎重に動く男性”の典型的な行動パターンなのだとか。
すぐに返さないのは、「重いと思われたくない」「余裕のある男を演じたい」そんな“駆け引き”の一種。
なるほど、恋愛とはメッセージひとつにも戦略が隠れている。
それでも、私は待ちきれずに「お疲れ様」と追いLINEをしてしまった。
既読がついたのは、またもや深夜。
彼はバーで友達と話しているのか、それとも一人でゲームしてるのか。
私のこと、少しでも思い出してくれているだろうか。
夜が深まるたび、妄想と現実の境界があいまいになっていく。
この“宙ぶらりんな関係”が、なぜか心地いいのはなぜだろう。
Day 3:未読放置から朝方既読 ― エネルギーの法則
朝、「昨日はどうだった?」と送ったメッセージ。
夕方になっても未読のまま。胸の奥がざわつく。
それが既読になったのは翌朝7時。
返信は、「ごめん、寝てた。昨日遅くまで仕事してて。」
その短い一文に、なぜか救われた気がした。
調べてみると、通知オフで夜はスマホを見ないタイプも多いらしい。
「未読=無視」とは限らない。
むしろ、彼にとって朝の時間帯が“LINEタイム”なのかもしれない。
恋愛心理の本に、“エネルギー管理”という言葉があった。
人は疲れていると、好きな人にすら返信できなくなる。
感情を動かすだけのエネルギーが残っていないからだという。
なるほど。返信の遅さ=冷たさじゃない。
私はようやくその意味を理解し始めていた。
そして気づいた。彼の返信には、必ず私への質問が一つだけ入っている。
興味を持ってくれている証拠かもしれない。
深夜の既読が続くのは、彼の生活リズム。
でも私の心は、いつも夜に波立つ。
Day 4:放置の夜 ― 脈なしの恐怖
「今週、会える?」
勇気を出して送ったメッセージ。既読がついたのは夜11時。
それから丸一日、返信なし。
頭の中で、ありとあらゆる最悪のパターンを想像してしまう。
“もう冷めた?” “他に気になる人がいる?”
ネットで読んだ記事には、「既読スルー=優先度が下がっているサイン」と書かれていた。
でも、別の意見もある。
回避依存の男性は、返信をどう書けばいいか悩みすぎて“動けなくなる”こともあるらしい。
夜中、ベッドの中でスマホを握りしめたまま、何度もLINE画面を開く。
彼のトークルームをスクロールしながら、「何がいけなかったのかな」と自問自答。
友達に相談すると、「彼のエネルギーを奪わない関係を目指した方がいい」と言われた。
その言葉が妙に刺さった。
確かに、私のメッセージは“返してほしい”という気持ちが滲みすぎていたかもしれない。
今夜の観察記は、少しだけ自分を見つめ直す夜になった。
Day 5:クライマックス ― 真相の夜
そして、ついに返信が来た。
「ごめん、忙しくて。来週会おうよ。」
たったそれだけで、胸のつかえが一気に溶けた。
放置されていた理由は、仕事のトラブルでスマホすら触れなかったからだという。
なんだ、そういうことだったのか。
人は見えない時間を勝手に“悪い方”に想像してしまう生き物だ。
でも、本当はそんなに単純じゃない。
夜の観察を通して、私はひとつ学んだ。
恋は“白か黒か”で測れない。
曖昧さを受け入れた瞬間、少しだけ優しくなれる。
これからも、彼の“夜”を読み解きながら、少しずつ距離を縮めていきたい。
次の章は――“会った夜の記録”になるかもしれない。

エピローグ:夜の終わり、そして新しい朝
この観察記を書いてみてわかった。
返信が遅い彼の背後には、いろんな“夜”がある。
仕事に追われる夜、静かに一人で考える夜、そして誰かを想いながらも言葉が出てこない夜。
恋はタイミングのゲーム。
既読がつく時間に一喜一憂する自分も、悪くないと思えるようになった。
もしあなたにも、「返信遅い彼」がいるなら、
今夜はちょっと深呼吸して、スマホを置いてみて。
彼が返事をくれるその時、きっとあなたの夜にも、
小さな光がともるはず。