今日は「返信窓・場面・合図」を固める。
ゴールは“子の安全と尊重が最優先”の形で初回60分を終えること。
私は“勝ち負けの記録をつくらない”と、今夜あらためて決める。

夜の台所。薄い明かり。
冷めたマグ、A4紙の角は少し折れている。
あの夜、相手が運動会の写真をSNSに上げた。
私が「手ぶらで来て」と言ったのに、大きな玩具を持ってきた。
雨の校門。子は嬉しそうで、私は怖かった。
——信頼が一歩ずつ削れた場所から、今日は歩き直す。
静かな台所
冷蔵庫の低い唸り。外は小雨。
私は紙を三つに線で割り、黒いペンを置く。
「写真は一枚だけ。手ぶら。帰りは歌一曲ぶんでバイバイ」
声に出して読む。三つの約束が胸に並ぶ。
スマホが震える。
「今度は手ぶらで行く。写真も一枚だけにする」
文字はぶっきらぼう。でも、ぎこちない絵文字が一つ付いていた。
あの人なりの、合図かもしれない。
「返信の窓は朝07–09時でいい?」
私が打つ。
「いい。既読は気にしない」
短い往復。けれど、前回の痛点から外していく会話だ。
私はありがとうの一行を足す。胸の針が少し抜ける。
※豆知識:取り決めは父母の話合いが基本。難しい場合は、第三者の場(相談・調停)で言葉を整える選択肢もある。([出典:裁判所])
小さな転機
定型文を整える。
候補日三つ。返信期限は明日21:00。変更は一回。
場所は公園のベンチ5番、雨なら図書館1F。
ここに一行、はっきり加える。
「SNSは当日中は共有しない。公開設定にしない」
「了解。前みたいには上げない。家族だけにする」
彼からの一行。
“守る気”が、今日は同じ方向を向いた気がした。
私は耳さわりの合図カードを切り、角を丸くする。
早退30分は太字。紙の手触りが少し柔らかくなる。
台所のテーブルに、小さな青いタイマーを置く。
この丸い音が、私にも走りすぎない合図になる。
——今日の地図は、あの公開の十二時間を繰り返さないためにある。
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